魔法の手
多くの拍手&コメントありがとうございます!
今回も「魔法の手」の続きになります。江利子様を書くにあたって原作読み直したら出番がほんと桂さん並で笑った。さすがに桂さんには負けるけど柏木の方がでてそう……焦点を当てられた援交騒動も結局本人はあんまりでなかったし。
例えば江利子が令に出会っていなかったら、
例えば祥子が祐巳のタイを直していなかったら、
そして、江利子と祐巳が出会ってしまったら、
そんな話。
今回も「魔法の手」の続きになります。江利子様を書くにあたって原作読み直したら出番がほんと桂さん並で笑った。さすがに桂さんには負けるけど柏木の方がでてそう……焦点を当てられた援交騒動も結局本人はあんまりでなかったし。
例えば江利子が令に出会っていなかったら、
例えば祥子が祐巳のタイを直していなかったら、
そして、江利子と祐巳が出会ってしまったら、
そんな話。
ごく普通の一年生なら訪れることさえ気が引きそうな薔薇の館。私はその前に立って眺めた。どちらかというともう老朽化が進んでいて、いつ取り壊しが決まってもおかしくないような建物だった。
それが山百合会という言葉をつけるだけでなぜか神聖視されてしまうのだから不思議なものだ。
「江利子様いるかな?」
私は不安になって声を上げた。
「いまさら何言ってるの。教室にはいなかったでしょう。ほらいくわよ」
そう蔦子さんが鼓舞して扉を開けようとドアノブに手をかけようとしたその時、二人の背後から声がした。
「山百合会に何か御用?」
透き通るような綺麗な声。
振り返るとウェーブの髪をはためかせて志摩子さんが優雅に立っていた。
「あっ、志摩子さん丁度良かった。私たち江利子様にお話があるのだけど」
蔦子さんはラッキーだと言わんばかりに手を叩いて用件を告げたが、祐巳は段々と近づいてきた対面に緊張でどうにかなりそうだった。
いっそ今朝の江利子様のように大声で叫べたらどれだけ楽になるだろうか。
「江利子様なら今二階にいらっしゃると思うから、お入りになったら?」
志摩子さんはそう言うと私たち二人を招きいれた。
ギシギシと音を立てる階段を上がっていく。これならいつ底が抜けてもおかしくないのかもしれない。
そんなことを思っていると志摩子さんが「どうかしたの?」と私の顔を覗き込んできたので慌てて何でもないと首を振った。
「そう?」
先頭の志摩子さんに続いて扉の前にやってくると、中から突然耳をつんざくような声が聞こえてきた。
「横暴ですわ。お姉さま方の意地悪!」
ドアにかけられた『会議中です、お静かに』を自ら破っている大声だった。
「どうやら祥子様いらっしゃるみたいね」
志摩子さんが私たちに申し訳なさそうに笑った。
「と言うことは今のは祥子様の?」
それに対して志摩子さんは「ええ、いつものことよ」と微笑を浮かべて、ノックもせずにドアをゆっくりと開けた。
と、その瞬間。
「すぐに連れて来ればいいのでしょう」
という捨て台詞にのような言葉を残して、一人の生徒がドアから勢いよく飛び出してきた。そして、その人物は扉の前に立っていた私にそのまま突っ込んできて二人ともなすすべもなくその場に倒れこんでしまった。
「祐巳さん、大丈夫?」
蔦子さんの心配そうな声が聞こえてくる。
体の方は全然大丈夫だったのだけど、なぜか不吉な予感がして私の日常が帰ってこないんじゃないかと、そんな考えが頭をよぎっていった。
「さて、どういうことだか聞きたいのだけれど?」
目の前にはなぜか紅薔薇様である容子様が腕組みをしてそう聞いた。だけど、むしろそれを聞きたいのは私のほうだった。いきなりぶつかられたと思ったら、名前を聞かれて、そしていきなりスールになりなさいときたものだ。気づけば薔薇様方に妹として紹介されていた。
江利子様はどうやら遅れてくるようで薔薇の館にはいなかった。いればきっとこの状況をどうにかしてくれそうなのに。
「ねえ、祐巳……ちゃん? だったかしら」
「どこうこうも、私が妹を決めたただそれだけのことです」
祥子様は席から立ち上がりそうな勢いだった。だが容子様は「あなたには聞いていないわ」とただ一言で黙らせてしまった。
「大体、課せられた仕事から抜け出したいからって、通りすがりの祐巳さんを巻き込んで言い分けないでしょ」
窓際の壁に寄りかかっていた白薔薇様の聖様が言った。
「一体どうなるんだろう?」
私の意思を無視して進んでいく会議を眺めながら、祐巳がそんなことを考えていると隣にいた蔦子さんが「はい」と手を上げた。
「何かしら蔦子さん」
「私には話がさっぱり見えません」
なぜ突然私を妹として紹介して、そして『課せられた仕事』とは一体なんのかその説明を蔦子さんは求めた。
「そうね説明しなくては失礼ね」
容子様は蔦子さんに今年の山百合会は劇でシンデレラを上演することになったこと。そして、シンデレラのキャストは祥子様になっていたが、王子様役の方が聖様でなく花寺の生徒会長だと知ると、その人選に難色を示していること。妹のいない人間に発言権がないという容子様の言葉に祥子様が妹を連れてくると飛び出していったことを説明した。
そして、運悪く一番初めに会った姉のいない生徒が私だったと言うわけだ。
私はどうしようかと思案していた。
今更、実は江利子様にもスールの申し出を受けているんです、なんて言えるはずもなく。それは蔦子さんも同じなようでこの状況がどうにかいい方に転んでくれないかとただ願うことしか出来なかった。
「なんにせよ、飛び出して一番初めに会った子をスールにするなんて短絡的なこと認められるわけないでしょう」
蓉子様が祥子様にそう切り出した丁度その時、
「ごめん、遅れた」
ビスケットの扉が開いてそう言いながら江利子様が入ってきた。
追記 コメントでキャストの王子役が令様になっているという指摘を受けて聖様にかえました。この部分は昔書いていた別のssの部分を丸々持ってきて少し書き換えただけだったので、見落としてしまいました。指摘してくれた方ありがとうございます(´▽`)
それが山百合会という言葉をつけるだけでなぜか神聖視されてしまうのだから不思議なものだ。
「江利子様いるかな?」
私は不安になって声を上げた。
「いまさら何言ってるの。教室にはいなかったでしょう。ほらいくわよ」
そう蔦子さんが鼓舞して扉を開けようとドアノブに手をかけようとしたその時、二人の背後から声がした。
「山百合会に何か御用?」
透き通るような綺麗な声。
振り返るとウェーブの髪をはためかせて志摩子さんが優雅に立っていた。
「あっ、志摩子さん丁度良かった。私たち江利子様にお話があるのだけど」
蔦子さんはラッキーだと言わんばかりに手を叩いて用件を告げたが、祐巳は段々と近づいてきた対面に緊張でどうにかなりそうだった。
いっそ今朝の江利子様のように大声で叫べたらどれだけ楽になるだろうか。
「江利子様なら今二階にいらっしゃると思うから、お入りになったら?」
志摩子さんはそう言うと私たち二人を招きいれた。
ギシギシと音を立てる階段を上がっていく。これならいつ底が抜けてもおかしくないのかもしれない。
そんなことを思っていると志摩子さんが「どうかしたの?」と私の顔を覗き込んできたので慌てて何でもないと首を振った。
「そう?」
先頭の志摩子さんに続いて扉の前にやってくると、中から突然耳をつんざくような声が聞こえてきた。
「横暴ですわ。お姉さま方の意地悪!」
ドアにかけられた『会議中です、お静かに』を自ら破っている大声だった。
「どうやら祥子様いらっしゃるみたいね」
志摩子さんが私たちに申し訳なさそうに笑った。
「と言うことは今のは祥子様の?」
それに対して志摩子さんは「ええ、いつものことよ」と微笑を浮かべて、ノックもせずにドアをゆっくりと開けた。
と、その瞬間。
「すぐに連れて来ればいいのでしょう」
という捨て台詞にのような言葉を残して、一人の生徒がドアから勢いよく飛び出してきた。そして、その人物は扉の前に立っていた私にそのまま突っ込んできて二人ともなすすべもなくその場に倒れこんでしまった。
「祐巳さん、大丈夫?」
蔦子さんの心配そうな声が聞こえてくる。
体の方は全然大丈夫だったのだけど、なぜか不吉な予感がして私の日常が帰ってこないんじゃないかと、そんな考えが頭をよぎっていった。
「さて、どういうことだか聞きたいのだけれど?」
目の前にはなぜか紅薔薇様である容子様が腕組みをしてそう聞いた。だけど、むしろそれを聞きたいのは私のほうだった。いきなりぶつかられたと思ったら、名前を聞かれて、そしていきなりスールになりなさいときたものだ。気づけば薔薇様方に妹として紹介されていた。
江利子様はどうやら遅れてくるようで薔薇の館にはいなかった。いればきっとこの状況をどうにかしてくれそうなのに。
「ねえ、祐巳……ちゃん? だったかしら」
「どこうこうも、私が妹を決めたただそれだけのことです」
祥子様は席から立ち上がりそうな勢いだった。だが容子様は「あなたには聞いていないわ」とただ一言で黙らせてしまった。
「大体、課せられた仕事から抜け出したいからって、通りすがりの祐巳さんを巻き込んで言い分けないでしょ」
窓際の壁に寄りかかっていた白薔薇様の聖様が言った。
「一体どうなるんだろう?」
私の意思を無視して進んでいく会議を眺めながら、祐巳がそんなことを考えていると隣にいた蔦子さんが「はい」と手を上げた。
「何かしら蔦子さん」
「私には話がさっぱり見えません」
なぜ突然私を妹として紹介して、そして『課せられた仕事』とは一体なんのかその説明を蔦子さんは求めた。
「そうね説明しなくては失礼ね」
容子様は蔦子さんに今年の山百合会は劇でシンデレラを上演することになったこと。そして、シンデレラのキャストは祥子様になっていたが、王子様役の方が聖様でなく花寺の生徒会長だと知ると、その人選に難色を示していること。妹のいない人間に発言権がないという容子様の言葉に祥子様が妹を連れてくると飛び出していったことを説明した。
そして、運悪く一番初めに会った姉のいない生徒が私だったと言うわけだ。
私はどうしようかと思案していた。
今更、実は江利子様にもスールの申し出を受けているんです、なんて言えるはずもなく。それは蔦子さんも同じなようでこの状況がどうにかいい方に転んでくれないかとただ願うことしか出来なかった。
「なんにせよ、飛び出して一番初めに会った子をスールにするなんて短絡的なこと認められるわけないでしょう」
蓉子様が祥子様にそう切り出した丁度その時、
「ごめん、遅れた」
ビスケットの扉が開いてそう言いながら江利子様が入ってきた。
追記 コメントでキャストの王子役が令様になっているという指摘を受けて聖様にかえました。この部分は昔書いていた別のssの部分を丸々持ってきて少し書き換えただけだったので、見落としてしまいました。指摘してくれた方ありがとうございます(´▽`)
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コメント
初コメです
No title
はじめまして、コメントありがとうございます。
アオイヨルさんの小説も楽しく読ませてもらってます。
行き当たりばったりで書いてるもんだから祥子様とか登場して書いてる本人が焦ってる状態で(苦笑)でもまあそっちの方が面白そうだからいっかと。まあ、そんなんですがまた読んでいただければ幸いです。
アオイヨルさんの小説も楽しく読ませてもらってます。
行き当たりばったりで書いてるもんだから祥子様とか登場して書いてる本人が焦ってる状態で(苦笑)でもまあそっちの方が面白そうだからいっかと。まあ、そんなんですがまた読んでいただければ幸いです。
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良いですね江×祐のカップリング。私はマイナーカプが好きなので楽しく読ませてもらっています。特に江×祐は余り見たことないですからね。
祥子様も加わって、これからの展開がとても楽しみです。
頑張って続きを書いてください。