魔法の手
前回の「魔法の手」の続きを書いてみました。
マリみてssでは祐巳×江利子が好きなんですが、他のカプに比べて絶対数が少ないようでちと残念。
例えば江利子が令に出会っていなかったら、
例えば祥子が祐巳のタイを直していなかったら、
そして、江利子と祐巳が出会ってしまったら、
そんな話。
マリみてssでは祐巳×江利子が好きなんですが、他のカプに比べて絶対数が少ないようでちと残念。
例えば江利子が令に出会っていなかったら、
例えば祥子が祐巳のタイを直していなかったら、
そして、江利子と祐巳が出会ってしまったら、
そんな話。
「はぁ」
「何よ? 朝から溜め息なんてついちゃって」
お昼休みになってもう何度目かの溜め息をついたところで桂さんが聞いてきた。
「何でもないの」
その溜め息の理由をいくら友達だからといってもおいそれと話せる内容のものではなかった。
私自身まだ信じられないのに。
まさかあの黄薔薇様かスールの申し出をされたなんて口が裂けても言えない。このクラスの中にも黄薔薇様のファンは多かったし、そんなことを言った日にはどうなるか分かったものじゃなかった。
「そう? 祐巳さんの顔には何でもないとは書いてないけど」
もっとも私の嘘は少しでも付き合いのある人なら大抵見破れてしまうのだけど。もともと分かりやすい顔をしているのがわるいのだろう、きっと。
「絶対誰にも言わない?」
「言わない。私の目を見て。さあ、信じて」
キラキラと擬音がつくような瞳で見つめられて、私はしょうがなく朝の出来事を桂さんに話すことにした。朝歩いていたら、前にいた生徒が大声で「つまらない」と叫んでいたので、どうしたのか聞いたら実はそれが黄薔薇様で、なぜかいきなりスールの申し込みをされたということ、全てを話すと私と同じように桂さんも呆然と口を開けていた。
「それ本当なの?」
「私だって信じられないくらいだよ」
でも、残念ながら本当みたいだった。すっ、と横から差し出された何かを見て私は顔を上げた。
「蔦子さん、どうしたの?」
蔦子さんはもうこれでもかってくらいに満足げな顔を浮かべていて、それがいい写真が撮れた時の表情であることは私にだって分かった。
「実はここにその証拠の写真があるんだけど?」
私は再び蔦子さんが机の上に置いた写真を見ると、そこには江利子様と手を繋いでは走っている私が写っていた。
「いつのまに」
「私は写真部エースですから」
そういえば一時間目の授業の時ぎりぎり間に合った私の数分後に蔦子さんが教室にやってきて、先生に謝っていたような気がする。
「じゃあ遅刻はこの写真の所為?」
「すごい執念ね」
私だけでなく桂さんも驚いていた。
「私はいい写真を撮るためなら何だってするから。悪魔に魂を売り渡したっていいわよ」
それはさすがにカトリック教系の学校としてどうだろう、とは思ったけど蔦子さんが写真にかける想いは伝わってた気がする。
「そんなことより、この写真いい出来だと思わない?」
そう言われて写真を見るが、私が江利子様に手を引っ張られて走っているだけで特にどうとは思わなかった。もちろん良い出来であることは疑いようがないのだけど。
「題して『ご主人様と犬』」
蔦子さんのネーミングに桂さんが吹きだして笑っている。
「祐巳さんが犬なわけね。面白すぎるわ、それ」
「ちょっとひどくない」
「他の候補はあるんだよね。もう一つは『お姫様と召使い』なんだけど、どっちが良い?」
その一言は桂さんをノックダウンさせるには十分で、乙女らしからぬ大声をあげて泣き崩れていた。
「祐巳さん、サイコー」
別に私が面白いわけじゃないのに、いつの間にか桂さんに存在自体を笑いにされてしまっていた。
「まあ、冗談はおいといて置いといて。本題なんだけど、二つほどお願いがあるんだ。一つ目はこの写真を文化祭で飾らせてもらう事なんだけどいいかな?」
「それは構わないけど」
むしろそれ以上のことを要求されそうで怖かった。
なんせ蔦子さんだ。
「そう。それは良かった。二つ目なんだけど、この写真を文化祭に飾らせてもらう許可を黄薔薇様にもらってきてほしいんだけど?」
「そんなの無理だよ。黄薔薇様だよ?」
「そうそう。なんてったって祐巳さんは『犬』だからね。ご主人様にお願い事はできないよね」
桂さんは相当つぼに嵌ったのか自分で言って自分で爆笑していた。
「でもスールを申し込まれるほどの仲なんでしょ? 大丈夫だと思うけどな」
桂さんを無視して蔦子さんは続ける。
確かにスールの申し込みはされたけど江利子様と会ったのは今日が初めてだったし、スールの申し出をした理由も勘と面白そうだったからだ。果たして仲が良いと言えるのだろうか。
「お願いよ、祐巳さん。私を助けると思って」
「しょうがないなー」
どっちにしろ江利子様にスールの申し出の返事をしなければいけなかったから、丁度いいと言えば丁度いいのだけど。
果たしてスールの申し出を断る人間と一緒に写っている写真を文化祭に展示していいと許可するかは、甚だ疑問である。
「ありがとう、祐巳さん」
お礼はいいから抱きつかないで貰いたかった。
「祐巳さんが、パ、パブロフの、いぬ」
結局、桂さんはお昼休みが終わるまでずっと立ち直れなかった。しかもパブロフの犬って確か条件反射のことを指してるんじゃなかったっけ?
私のそんな小さな疑問は桂さんの笑い声にかき消されるわけだ。
「何よ? 朝から溜め息なんてついちゃって」
お昼休みになってもう何度目かの溜め息をついたところで桂さんが聞いてきた。
「何でもないの」
その溜め息の理由をいくら友達だからといってもおいそれと話せる内容のものではなかった。
私自身まだ信じられないのに。
まさかあの黄薔薇様かスールの申し出をされたなんて口が裂けても言えない。このクラスの中にも黄薔薇様のファンは多かったし、そんなことを言った日にはどうなるか分かったものじゃなかった。
「そう? 祐巳さんの顔には何でもないとは書いてないけど」
もっとも私の嘘は少しでも付き合いのある人なら大抵見破れてしまうのだけど。もともと分かりやすい顔をしているのがわるいのだろう、きっと。
「絶対誰にも言わない?」
「言わない。私の目を見て。さあ、信じて」
キラキラと擬音がつくような瞳で見つめられて、私はしょうがなく朝の出来事を桂さんに話すことにした。朝歩いていたら、前にいた生徒が大声で「つまらない」と叫んでいたので、どうしたのか聞いたら実はそれが黄薔薇様で、なぜかいきなりスールの申し込みをされたということ、全てを話すと私と同じように桂さんも呆然と口を開けていた。
「それ本当なの?」
「私だって信じられないくらいだよ」
でも、残念ながら本当みたいだった。すっ、と横から差し出された何かを見て私は顔を上げた。
「蔦子さん、どうしたの?」
蔦子さんはもうこれでもかってくらいに満足げな顔を浮かべていて、それがいい写真が撮れた時の表情であることは私にだって分かった。
「実はここにその証拠の写真があるんだけど?」
私は再び蔦子さんが机の上に置いた写真を見ると、そこには江利子様と手を繋いでは走っている私が写っていた。
「いつのまに」
「私は写真部エースですから」
そういえば一時間目の授業の時ぎりぎり間に合った私の数分後に蔦子さんが教室にやってきて、先生に謝っていたような気がする。
「じゃあ遅刻はこの写真の所為?」
「すごい執念ね」
私だけでなく桂さんも驚いていた。
「私はいい写真を撮るためなら何だってするから。悪魔に魂を売り渡したっていいわよ」
それはさすがにカトリック教系の学校としてどうだろう、とは思ったけど蔦子さんが写真にかける想いは伝わってた気がする。
「そんなことより、この写真いい出来だと思わない?」
そう言われて写真を見るが、私が江利子様に手を引っ張られて走っているだけで特にどうとは思わなかった。もちろん良い出来であることは疑いようがないのだけど。
「題して『ご主人様と犬』」
蔦子さんのネーミングに桂さんが吹きだして笑っている。
「祐巳さんが犬なわけね。面白すぎるわ、それ」
「ちょっとひどくない」
「他の候補はあるんだよね。もう一つは『お姫様と召使い』なんだけど、どっちが良い?」
その一言は桂さんをノックダウンさせるには十分で、乙女らしからぬ大声をあげて泣き崩れていた。
「祐巳さん、サイコー」
別に私が面白いわけじゃないのに、いつの間にか桂さんに存在自体を笑いにされてしまっていた。
「まあ、冗談はおいといて置いといて。本題なんだけど、二つほどお願いがあるんだ。一つ目はこの写真を文化祭で飾らせてもらう事なんだけどいいかな?」
「それは構わないけど」
むしろそれ以上のことを要求されそうで怖かった。
なんせ蔦子さんだ。
「そう。それは良かった。二つ目なんだけど、この写真を文化祭に飾らせてもらう許可を黄薔薇様にもらってきてほしいんだけど?」
「そんなの無理だよ。黄薔薇様だよ?」
「そうそう。なんてったって祐巳さんは『犬』だからね。ご主人様にお願い事はできないよね」
桂さんは相当つぼに嵌ったのか自分で言って自分で爆笑していた。
「でもスールを申し込まれるほどの仲なんでしょ? 大丈夫だと思うけどな」
桂さんを無視して蔦子さんは続ける。
確かにスールの申し込みはされたけど江利子様と会ったのは今日が初めてだったし、スールの申し出をした理由も勘と面白そうだったからだ。果たして仲が良いと言えるのだろうか。
「お願いよ、祐巳さん。私を助けると思って」
「しょうがないなー」
どっちにしろ江利子様にスールの申し出の返事をしなければいけなかったから、丁度いいと言えば丁度いいのだけど。
果たしてスールの申し出を断る人間と一緒に写っている写真を文化祭に展示していいと許可するかは、甚だ疑問である。
「ありがとう、祐巳さん」
お礼はいいから抱きつかないで貰いたかった。
「祐巳さんが、パ、パブロフの、いぬ」
結局、桂さんはお昼休みが終わるまでずっと立ち直れなかった。しかもパブロフの犬って確か条件反射のことを指してるんじゃなかったっけ?
私のそんな小さな疑問は桂さんの笑い声にかき消されるわけだ。
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