ウァレンティーヌスの悪戯
拍手&コメントありがとうございます。
ウァレンティーヌスの悪戯。終わり。無理やり詰め込んだ感。
何だかんだで結構江利×祐巳やってるなー。しかも祐巳×乃梨好きとか書いときながら、ほとんど触れてない。でも、祐巳×乃梨はメジャーっぽいから誰か書くだろうと(他力本願)。とりあえず、この江利×祐巳は祐巳に妹ができるまではやってみたいかも。
ウァレンティーヌスの悪戯。終わり。無理やり詰め込んだ感。
何だかんだで結構江利×祐巳やってるなー。しかも祐巳×乃梨好きとか書いときながら、ほとんど触れてない。でも、祐巳×乃梨はメジャーっぽいから誰か書くだろうと(他力本願)。とりあえず、この江利×祐巳は祐巳に妹ができるまではやってみたいかも。
お姉さまが手ぶらで戻ってきた。
あろうことか私に弁解も謝罪もしないどころか、カードは別の生徒が見つけたということだった。しかも何やら訳ありで、カードを持っていたほうが中等部の生徒だということ。それがバレるのはさすがにまずいからと、実の姉である克美様が見つけたということにして、私とデートをするということだった。
「お姉さま」
チョコを配り終え、全てが終わると私は真っ先にお姉さまの元へとむかった。
「どういうことですか。約束が違います」
「私は約束を破った覚えはないわよ」
「なっ、この期に及んでまだそんなことを言いますか! お姉さまは私に必ずカードを見つけ出すと」
私が言い終わらないうちにお姉さまが口を挟む。
「ええ、言いましたとも」
「なら」
「私は必ずカードを見つけ出すと言ったのよ。別に見つけ出した後、持って来るとも、デートに行くとも言ってないわよ。カードを見つけ出して破り捨てたかもしれないし、祐巳が考えつかないようなもっと難しい場所に変えるかもしれないし、もしかしたら誰かのポケットの中に忍ばせたかもしれない」
「やっぱりあなただったのね、江利子さん」
突然、現れた第三者。
いや、克美様とその妹の笙子ちゃんだった。
「職員室の壁。教えてくれたのは江利子さんよ、祐巳さん」
「えっ」
克美さまの一言に驚きの声を上げた。
それはお姉さまが私のカードを見つけていたということに他ならないからだった。
「あら私のために証言してくれるなんて、どんな風の吹き回しなのかしら、克美さん」
「私は祐巳さんのために言ったのよ。あなたのためじゃないわ」
「それしても職員室の壁の脇なんてまだまだね。人は物を探す時に下を向くという点に注目したことは確かに良かったけど、私を満足させるにはまだ程遠いわよ」
そう言われると何も言い返せなかった。
お姉さまは確かに私のカードを見つけてくださって、それは確かに嬉しいことなのだけど。なぜそのカードを。
「そうだ! なんでカードを克美様に」
「それは是非私たちも聞きたいわね」
ずい、とお姉さまの前に立って克美さまが言った。さすがは勉強でお姉さまと互角に張り合うだけはあって、堂々としていた。
「あら、迷惑だったかしら」
「ええ、迷惑よ」
「残念ね、祐巳」
なぜか私に話を振られて私は答えに詰まった。
「別に祐巳さんとデートすることを迷惑だといってるわけじゃないわ」
「でも、そう言ってるのも同然じゃない」
お姉さまは明らかに楽しんでいた。
まだ妹になって半年しか経っていないけどそのことは十分伝わってきた。そして、もしかしてこれがお姉さまがカードを渡した理由なんじゃないないかって思えてきた。
私のお姉さまは変り種と面白いものに目がない。
だから、これもしょうがないのかもしれないと半分あきらめの入った目で二人のやり取りを見つめていた。
「私はただ何で私たちを巻き込んだのって聞いてるの! カードを笙子なんかに渡して、もし笙子が中等部の生徒だってことがばれて、いじめられでもしたらどうするつもりだったのよ」
「あら、そうならないためにあなたがいるんじゃない」
「やっぱりわざとやったのね」
「人聞きが悪い」
私は蚊帳の外にされている同士、もとい笙子ちゃんのもとへ寄っていって話しかけた。
「なんか大変なことになっちゃったね」
「はい」
「笙子ちゃんはどうしてイベントに参加しようって思ったの?」
「高等部には私を夢中にさせてくれる、ワクワクできるような何かがあると思ったんです」
「へぇー。それでなにか見つかった?」
「どうでしょう? でも、見つかりそうではあります」
「そう? なら良かった」
「良かったですか?」
「うん、良かっただよ。だって私はこの学校が大好きだから。この学校でそんな夢中になれるワクワクを見つけてくれれば私も嬉しい」
笙子ちゃんははにかんだ笑顔を浮かべて、私も笑った。
そして、未だに言い争いを続けている二人をどうやって止めるべきか、私の頭をフル稼働させて考えるのだった。結局、二人の子供みたいな喧嘩は笙子ちゃんと私によってすぐに鎮火したのだけど、真面目で有名な克美さまがお姉さまとこんなに言い争うなんて思いもしなかったので、意外だった。
「祐巳さんはどうして江利子さんの妹になったの?」
デートの日、克美さまが立ててくださったデートプランを消化して、喫茶店でお茶をしていると突然克美様が聞いた。
「分かりません。克美様はどうして妹を作らなかったんですか?」
私の反撃を予想していなかったのか、克美様は驚いた表情をしていた。
「私は、そうね。妹なんてくだらない。そんな時間があるなら勉強していた方がいいと思っていたからよ。バレンタインイベントなんて浮かれている生徒がやるだけで、そんなことをやってる暇があるなら一つでも英単語を覚える方がいいと思っていたの」
「いた、ということは今はどうなんですか?」
「今はどうかな? もし私が妹を作っていたら、今よりもっと楽しかったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そんなことは私には分からない。でも、今ただ一つ言えることがあるとすれば、そのくだらないと思っていたイベントのおかげで私が変われるチャンスをもらったことかな」
克美さまはコーヒーを飲み干す。
「笙子のことよろしくね。もし良かったら、祐巳さんの妹にしても構わないから」
「最初の方は喜んで引き受けます。でも、後のほうは私よりもっとふさわしい人がいるかもしれませんよ」
バレンタインイベントの数日後、笙子ちゃんのことを聞いてきたカメラ好きの、自称写真部エースを思い浮かべながらそんなことを答えた。
「そうなの?」
「どうでしょう?」
「まあ、いいわ。今日はありがとう。下級生の子と遊びに行く機会なんて、まったくなかったから新鮮で楽しかった」
「私もです」
「でも、本当は江利子さんとデートしたかったんじゃない?」
「そんなことありませんよ」
「そう?」
お姉さまとデートしたかったのは嘘じゃないが、お姉さまとならいつでもできるし、こういう機会にしか克美さまと一緒に出かけることなんてなかったのだから、これはこれでいい思い出だ。
「出ましょうか? 最後にデートのお礼があるのよ」
「お礼なんて」
「いいから。私がしたいの」
「はぁ、それじゃあ」
そうまで言われたら断る理由がない。お店を出て近くの公園まで歩いていくと、克美さまはベンチに腰を下ろしたので私もその隣に座った。お礼って一体なんだろうと思っていると、克美さまは時計に目をやって「そろそろね」なんて呟いていた。
「あの、それでお礼というのは」
「ああ、今来た」
来たってお礼が歩いてやってくるのだろうか。私は訳が分からず克美さまが指を指した方を振り向いた。
「へ」
いるはずのないその人に私は思わず間抜けな声を上げた。そこにはヘアバンドで自慢のおでこを全開にしているお姉さまが立っていた。
「それじゃあ、私はもう行くわ。たまには素直になってみたら?」
克美さまはそれだけを言うとさっさと帰ってしまった。
「どうしてお姉さまが?」
「呼ばれたのよ」
「克美さまですか」
「ええ。貸しを作るのは嫌だったのだけど、祐巳に寂しい思いをさせるわけにはいかないからね」
「別に寂しがってなんていませんよ」
本当はお姉さまが来てくれて、嬉しかったのだけど口には出さなかった。
「強がっちゃって」
お姉さまはそう言うと私を抱きしめてくれた。そうしてもらえるだけで全てがどうでも良くなってしまったから不思議だった。
「約束くらい守ってください」
お姉さまは私のお姉さまで、お姉さまの妹は私ただ一人なのだから少しくらいわがまま言ったって、多分いい。誰に遠慮することがある。
今はまだこの腕の中で、頼りない妹でいられる。
「ごめんね」
「いいんです。そんなお姉さまが私は好きなんですから」
「じゃあ約束どおりデートしましょうか?」
「はい!」
だから、今はまだ妹気分で。
お姉さまが卒業されてしまうその時までは。
あろうことか私に弁解も謝罪もしないどころか、カードは別の生徒が見つけたということだった。しかも何やら訳ありで、カードを持っていたほうが中等部の生徒だということ。それがバレるのはさすがにまずいからと、実の姉である克美様が見つけたということにして、私とデートをするということだった。
「お姉さま」
チョコを配り終え、全てが終わると私は真っ先にお姉さまの元へとむかった。
「どういうことですか。約束が違います」
「私は約束を破った覚えはないわよ」
「なっ、この期に及んでまだそんなことを言いますか! お姉さまは私に必ずカードを見つけ出すと」
私が言い終わらないうちにお姉さまが口を挟む。
「ええ、言いましたとも」
「なら」
「私は必ずカードを見つけ出すと言ったのよ。別に見つけ出した後、持って来るとも、デートに行くとも言ってないわよ。カードを見つけ出して破り捨てたかもしれないし、祐巳が考えつかないようなもっと難しい場所に変えるかもしれないし、もしかしたら誰かのポケットの中に忍ばせたかもしれない」
「やっぱりあなただったのね、江利子さん」
突然、現れた第三者。
いや、克美様とその妹の笙子ちゃんだった。
「職員室の壁。教えてくれたのは江利子さんよ、祐巳さん」
「えっ」
克美さまの一言に驚きの声を上げた。
それはお姉さまが私のカードを見つけていたということに他ならないからだった。
「あら私のために証言してくれるなんて、どんな風の吹き回しなのかしら、克美さん」
「私は祐巳さんのために言ったのよ。あなたのためじゃないわ」
「それしても職員室の壁の脇なんてまだまだね。人は物を探す時に下を向くという点に注目したことは確かに良かったけど、私を満足させるにはまだ程遠いわよ」
そう言われると何も言い返せなかった。
お姉さまは確かに私のカードを見つけてくださって、それは確かに嬉しいことなのだけど。なぜそのカードを。
「そうだ! なんでカードを克美様に」
「それは是非私たちも聞きたいわね」
ずい、とお姉さまの前に立って克美さまが言った。さすがは勉強でお姉さまと互角に張り合うだけはあって、堂々としていた。
「あら、迷惑だったかしら」
「ええ、迷惑よ」
「残念ね、祐巳」
なぜか私に話を振られて私は答えに詰まった。
「別に祐巳さんとデートすることを迷惑だといってるわけじゃないわ」
「でも、そう言ってるのも同然じゃない」
お姉さまは明らかに楽しんでいた。
まだ妹になって半年しか経っていないけどそのことは十分伝わってきた。そして、もしかしてこれがお姉さまがカードを渡した理由なんじゃないないかって思えてきた。
私のお姉さまは変り種と面白いものに目がない。
だから、これもしょうがないのかもしれないと半分あきらめの入った目で二人のやり取りを見つめていた。
「私はただ何で私たちを巻き込んだのって聞いてるの! カードを笙子なんかに渡して、もし笙子が中等部の生徒だってことがばれて、いじめられでもしたらどうするつもりだったのよ」
「あら、そうならないためにあなたがいるんじゃない」
「やっぱりわざとやったのね」
「人聞きが悪い」
私は蚊帳の外にされている同士、もとい笙子ちゃんのもとへ寄っていって話しかけた。
「なんか大変なことになっちゃったね」
「はい」
「笙子ちゃんはどうしてイベントに参加しようって思ったの?」
「高等部には私を夢中にさせてくれる、ワクワクできるような何かがあると思ったんです」
「へぇー。それでなにか見つかった?」
「どうでしょう? でも、見つかりそうではあります」
「そう? なら良かった」
「良かったですか?」
「うん、良かっただよ。だって私はこの学校が大好きだから。この学校でそんな夢中になれるワクワクを見つけてくれれば私も嬉しい」
笙子ちゃんははにかんだ笑顔を浮かべて、私も笑った。
そして、未だに言い争いを続けている二人をどうやって止めるべきか、私の頭をフル稼働させて考えるのだった。結局、二人の子供みたいな喧嘩は笙子ちゃんと私によってすぐに鎮火したのだけど、真面目で有名な克美さまがお姉さまとこんなに言い争うなんて思いもしなかったので、意外だった。
「祐巳さんはどうして江利子さんの妹になったの?」
デートの日、克美さまが立ててくださったデートプランを消化して、喫茶店でお茶をしていると突然克美様が聞いた。
「分かりません。克美様はどうして妹を作らなかったんですか?」
私の反撃を予想していなかったのか、克美様は驚いた表情をしていた。
「私は、そうね。妹なんてくだらない。そんな時間があるなら勉強していた方がいいと思っていたからよ。バレンタインイベントなんて浮かれている生徒がやるだけで、そんなことをやってる暇があるなら一つでも英単語を覚える方がいいと思っていたの」
「いた、ということは今はどうなんですか?」
「今はどうかな? もし私が妹を作っていたら、今よりもっと楽しかったのかもしれないし、そうじゃないかもしれない。そんなことは私には分からない。でも、今ただ一つ言えることがあるとすれば、そのくだらないと思っていたイベントのおかげで私が変われるチャンスをもらったことかな」
克美さまはコーヒーを飲み干す。
「笙子のことよろしくね。もし良かったら、祐巳さんの妹にしても構わないから」
「最初の方は喜んで引き受けます。でも、後のほうは私よりもっとふさわしい人がいるかもしれませんよ」
バレンタインイベントの数日後、笙子ちゃんのことを聞いてきたカメラ好きの、自称写真部エースを思い浮かべながらそんなことを答えた。
「そうなの?」
「どうでしょう?」
「まあ、いいわ。今日はありがとう。下級生の子と遊びに行く機会なんて、まったくなかったから新鮮で楽しかった」
「私もです」
「でも、本当は江利子さんとデートしたかったんじゃない?」
「そんなことありませんよ」
「そう?」
お姉さまとデートしたかったのは嘘じゃないが、お姉さまとならいつでもできるし、こういう機会にしか克美さまと一緒に出かけることなんてなかったのだから、これはこれでいい思い出だ。
「出ましょうか? 最後にデートのお礼があるのよ」
「お礼なんて」
「いいから。私がしたいの」
「はぁ、それじゃあ」
そうまで言われたら断る理由がない。お店を出て近くの公園まで歩いていくと、克美さまはベンチに腰を下ろしたので私もその隣に座った。お礼って一体なんだろうと思っていると、克美さまは時計に目をやって「そろそろね」なんて呟いていた。
「あの、それでお礼というのは」
「ああ、今来た」
来たってお礼が歩いてやってくるのだろうか。私は訳が分からず克美さまが指を指した方を振り向いた。
「へ」
いるはずのないその人に私は思わず間抜けな声を上げた。そこにはヘアバンドで自慢のおでこを全開にしているお姉さまが立っていた。
「それじゃあ、私はもう行くわ。たまには素直になってみたら?」
克美さまはそれだけを言うとさっさと帰ってしまった。
「どうしてお姉さまが?」
「呼ばれたのよ」
「克美さまですか」
「ええ。貸しを作るのは嫌だったのだけど、祐巳に寂しい思いをさせるわけにはいかないからね」
「別に寂しがってなんていませんよ」
本当はお姉さまが来てくれて、嬉しかったのだけど口には出さなかった。
「強がっちゃって」
お姉さまはそう言うと私を抱きしめてくれた。そうしてもらえるだけで全てがどうでも良くなってしまったから不思議だった。
「約束くらい守ってください」
お姉さまは私のお姉さまで、お姉さまの妹は私ただ一人なのだから少しくらいわがまま言ったって、多分いい。誰に遠慮することがある。
今はまだこの腕の中で、頼りない妹でいられる。
「ごめんね」
「いいんです。そんなお姉さまが私は好きなんですから」
「じゃあ約束どおりデートしましょうか?」
「はい!」
だから、今はまだ妹気分で。
お姉さまが卒業されてしまうその時までは。
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