シロイカゲ
※注 この物語はプロットを最後まで書いていないので完結するかどうかまったく分かりません。それでもいいという方は読んでみてください。試しに一話載っけます。というかまだここまでしか書いてない。
アカイイトとのクロスオーバーやってしまいました。設定把握してないので間違ってたらすいません。
アカイイトとのクロスオーバーやってしまいました。設定把握してないので間違ってたらすいません。
私立リリアン女学園。
十八年間通い続ければ今でも温室育ちの純粋培養のお嬢様が箱入りで出荷される歴史ある学校である。
そして、忘れ去られた過去を未だに背負い続けている学校でもあった。
そんな学校に今日転校生がやってくることになっていた。あまり刺激のない乙女達にとってそんな外からの人間というのは噂の格好の的だった。
ここは一年桃組。
「いったい誰が来るんだろうね?」
桂さんはカメラを首からぶら下げて授業以外の時は話さないことで有名な蔦子さんに話しかける。
「私の情報では頭はそんなに良くないらしいよ。どうやら編入試験はあまり良い出来じゃなかったらしいから。まあ百聞は一見にしかずっていうし、それだけでどんな子か判断することはできないけどね」
「まったく、そんな情報一体どこから仕入れてくるのよ」
「ふふ、秘密だよ」
桂さんと蔦子さんは小学校からずっとリリアンで同じクラスになったことも数回あるほどの仲良しだった。
ガラ、
先生が入ってくる。
「はい、みんな座って」
パンパン、と手を叩いて生徒を静かにさせる。先生は一度教室を見回して話してる子がいないか見ると廊下で待っているのだろう転校生を呼んだ。
「それじゃあ、祐巳さん入ってきてくれる?」
「はい」
そう言って入ってきたのは蔦子さんや桂さんの想像をある意味裏切らない生徒だった。髪は横で二つに縛ったツインテールで、それがその子の子供っぽさをさらに醸し出していた。
お約束みたいに何もないところでこけそうになっているし。
「福沢祐巳です。よろしくおねがいします」
だけど周りに与える印象とは対照的に祐巳は無愛想にそれだけを言うとさっさと自分の席に向かった。
「どうも」
その祐巳の席とは蔦子さんの右隣であり、桂さんの斜め右隣だったわけだ。
ペコ、と頭を下げると祐巳はそのまま座ってしまった。だから蔦子さんや桂さんは緊張しているんだと勘違いした。
だけど祐巳は緊張しているわけでも、人見知りしているわけでもなかった。
「何で私がこんなところに」
祐巳は誰にも聞こえないように小さく呟いた。
そもそも祐巳がこの学校に来たのは、それがお母さんの遺言だったからだった。祐巳のお母さんはつい最近病気で亡くなってしまった。そのお母さんが望んだことならとしょうがなく、通っていた学校を辞めてリリアンに編入したのだが……。
祐巳もまさかこんなお嬢様学校だとは思っていなかったのだ。
「さすがに頭が痛いかも」
親しい友達に天然と言われていた祐巳ですら、この学校が普通とは違うことが分かって慣れるのは相当大変だろうな、となんとなく思っていた。
「祐巳さん」
「えっと」
祐巳が誰だっけと頭の引き出しから記憶の棚を開けていると先に蔦子さんが答えてくれた。
「私は写真部の武嶋蔦子。それでこっちの子が……桂さん」
「初めまして、武嶋さん?」
「ここでは下の名前に同級生ならさん、上級生なら様をつけて呼び合うのよ」
自信なさげに呟くと桂さんが優しく教えてくれた。基本的に面倒見がいいのかもしれない。
「へー、じゃあ蔦子さんに桂さんね」
「外部からきた人間は慣れるのに時間がかかるかもね」
蔦子さんはそう付け足す。
祐巳も確かにそうかもしれないと心の中で思っていた。なんせ親しい友達はちゃん付けや呼び捨てをしていたし、親しくない人だったら名字にさんをつけて呼ぶのが普通だったから。
「それで祐巳さんはこんな時期に何で転校?」
祐巳はその問いに答えようか迷う。
答える分には全然構わなかったのだが、答えることによって空気が重くなってしまう場面を何度も経験していた。ならば言わない方が得策なのではないだろうか、と最近の祐巳は思うようになっていた。
「あ、別に言いたくなかったらいいんだけど」
「んー、言いたくないわけじゃないんだけど、私は気にしてないから重く取らないでね」
蔦子さんと桂さんは頷く。
「お母さんの遺言なんだ」
「え」
桂さんが驚いたように声をあげて、蔦子さんが目を丸くしている。だから言いたくなかったのに、と祐巳が思っていると
「そうなんだ、大変だったね」
何でもないように蔦子さんが言った。
「あ、うん」
「てっきり空気が悪くなると思った?」
まるで祐巳の心を読むかのように蔦子さんが諳んじる。
「もしかしてまた私顔に出てた?」
「顔?」
「あ、前の学校で親しかった友達によく考えてることが顔に出るよって言われたから」
祐巳が言うと桂さんが笑って、その後に続くように蔦子さんも笑った。
「ひどい」
「そう?」
とぼけるように蔦子さんは手を上げる。
「祐巳さんってさ、もしかして私たちのこと純粋培養のお嬢様とか思ってたんでしょ?」
「ぐ」
今度は桂さんに思っていたことを当てられて何も言えなくなってしまう。確かに蔦子さんや桂さんに会うまではリリアン女学園にいる生徒なんて噂が大好きな世間知らずのお嬢様だと思っていた。
だけど、その認識を変えざるをえない。
蔦子さんや桂さんは祐巳が思っているような世間知らずのお嬢様ではなかった。
「それで、会ってみてどうだった? まだ私達は純粋培養のお嬢様?」
蔦子さんの問いに祐巳は首を振る。
この二人は祐巳がこのクラスに慣れるためにこうして話に来てくれて、祐巳が慣れないリリアンのやり方でなくわざわざ祐巳に合わせて話をしてくれているんだということがなんとなく感じられた。
「ありがとう」
「私たちお礼を言われるようなことしたかしら」
どう、と蔦子さんに桂さんは聞く。
「いや、私達は単純に祐巳さんと友達になりたいと思っているだけだからね」
「そう」
祐巳はそう言われてさげていた頭を上げる。
「じゃあよろしくだね」
祐巳がそう手を差し出すと蔦子さんと桂さんは大正解だというように祐巳の手を握って握手をした。
その後も祐巳はこの学園の珍しいについて教えてもらっていた。
例えば、スールというシステムがあり、ロザリオを授受する儀式を行って姉妹となることを誓うこと、山百合会と呼ばれる生徒会があってそこには紅薔薇様、白薔薇様、黄薔薇様と呼ばれる生徒会長がいることだった。
十八年間通い続ければ今でも温室育ちの純粋培養のお嬢様が箱入りで出荷される歴史ある学校である。
そして、忘れ去られた過去を未だに背負い続けている学校でもあった。
そんな学校に今日転校生がやってくることになっていた。あまり刺激のない乙女達にとってそんな外からの人間というのは噂の格好の的だった。
ここは一年桃組。
「いったい誰が来るんだろうね?」
桂さんはカメラを首からぶら下げて授業以外の時は話さないことで有名な蔦子さんに話しかける。
「私の情報では頭はそんなに良くないらしいよ。どうやら編入試験はあまり良い出来じゃなかったらしいから。まあ百聞は一見にしかずっていうし、それだけでどんな子か判断することはできないけどね」
「まったく、そんな情報一体どこから仕入れてくるのよ」
「ふふ、秘密だよ」
桂さんと蔦子さんは小学校からずっとリリアンで同じクラスになったことも数回あるほどの仲良しだった。
ガラ、
先生が入ってくる。
「はい、みんな座って」
パンパン、と手を叩いて生徒を静かにさせる。先生は一度教室を見回して話してる子がいないか見ると廊下で待っているのだろう転校生を呼んだ。
「それじゃあ、祐巳さん入ってきてくれる?」
「はい」
そう言って入ってきたのは蔦子さんや桂さんの想像をある意味裏切らない生徒だった。髪は横で二つに縛ったツインテールで、それがその子の子供っぽさをさらに醸し出していた。
お約束みたいに何もないところでこけそうになっているし。
「福沢祐巳です。よろしくおねがいします」
だけど周りに与える印象とは対照的に祐巳は無愛想にそれだけを言うとさっさと自分の席に向かった。
「どうも」
その祐巳の席とは蔦子さんの右隣であり、桂さんの斜め右隣だったわけだ。
ペコ、と頭を下げると祐巳はそのまま座ってしまった。だから蔦子さんや桂さんは緊張しているんだと勘違いした。
だけど祐巳は緊張しているわけでも、人見知りしているわけでもなかった。
「何で私がこんなところに」
祐巳は誰にも聞こえないように小さく呟いた。
そもそも祐巳がこの学校に来たのは、それがお母さんの遺言だったからだった。祐巳のお母さんはつい最近病気で亡くなってしまった。そのお母さんが望んだことならとしょうがなく、通っていた学校を辞めてリリアンに編入したのだが……。
祐巳もまさかこんなお嬢様学校だとは思っていなかったのだ。
「さすがに頭が痛いかも」
親しい友達に天然と言われていた祐巳ですら、この学校が普通とは違うことが分かって慣れるのは相当大変だろうな、となんとなく思っていた。
「祐巳さん」
「えっと」
祐巳が誰だっけと頭の引き出しから記憶の棚を開けていると先に蔦子さんが答えてくれた。
「私は写真部の武嶋蔦子。それでこっちの子が……桂さん」
「初めまして、武嶋さん?」
「ここでは下の名前に同級生ならさん、上級生なら様をつけて呼び合うのよ」
自信なさげに呟くと桂さんが優しく教えてくれた。基本的に面倒見がいいのかもしれない。
「へー、じゃあ蔦子さんに桂さんね」
「外部からきた人間は慣れるのに時間がかかるかもね」
蔦子さんはそう付け足す。
祐巳も確かにそうかもしれないと心の中で思っていた。なんせ親しい友達はちゃん付けや呼び捨てをしていたし、親しくない人だったら名字にさんをつけて呼ぶのが普通だったから。
「それで祐巳さんはこんな時期に何で転校?」
祐巳はその問いに答えようか迷う。
答える分には全然構わなかったのだが、答えることによって空気が重くなってしまう場面を何度も経験していた。ならば言わない方が得策なのではないだろうか、と最近の祐巳は思うようになっていた。
「あ、別に言いたくなかったらいいんだけど」
「んー、言いたくないわけじゃないんだけど、私は気にしてないから重く取らないでね」
蔦子さんと桂さんは頷く。
「お母さんの遺言なんだ」
「え」
桂さんが驚いたように声をあげて、蔦子さんが目を丸くしている。だから言いたくなかったのに、と祐巳が思っていると
「そうなんだ、大変だったね」
何でもないように蔦子さんが言った。
「あ、うん」
「てっきり空気が悪くなると思った?」
まるで祐巳の心を読むかのように蔦子さんが諳んじる。
「もしかしてまた私顔に出てた?」
「顔?」
「あ、前の学校で親しかった友達によく考えてることが顔に出るよって言われたから」
祐巳が言うと桂さんが笑って、その後に続くように蔦子さんも笑った。
「ひどい」
「そう?」
とぼけるように蔦子さんは手を上げる。
「祐巳さんってさ、もしかして私たちのこと純粋培養のお嬢様とか思ってたんでしょ?」
「ぐ」
今度は桂さんに思っていたことを当てられて何も言えなくなってしまう。確かに蔦子さんや桂さんに会うまではリリアン女学園にいる生徒なんて噂が大好きな世間知らずのお嬢様だと思っていた。
だけど、その認識を変えざるをえない。
蔦子さんや桂さんは祐巳が思っているような世間知らずのお嬢様ではなかった。
「それで、会ってみてどうだった? まだ私達は純粋培養のお嬢様?」
蔦子さんの問いに祐巳は首を振る。
この二人は祐巳がこのクラスに慣れるためにこうして話に来てくれて、祐巳が慣れないリリアンのやり方でなくわざわざ祐巳に合わせて話をしてくれているんだということがなんとなく感じられた。
「ありがとう」
「私たちお礼を言われるようなことしたかしら」
どう、と蔦子さんに桂さんは聞く。
「いや、私達は単純に祐巳さんと友達になりたいと思っているだけだからね」
「そう」
祐巳はそう言われてさげていた頭を上げる。
「じゃあよろしくだね」
祐巳がそう手を差し出すと蔦子さんと桂さんは大正解だというように祐巳の手を握って握手をした。
その後も祐巳はこの学園の珍しいについて教えてもらっていた。
例えば、スールというシステムがあり、ロザリオを授受する儀式を行って姉妹となることを誓うこと、山百合会と呼ばれる生徒会があってそこには紅薔薇様、白薔薇様、黄薔薇様と呼ばれる生徒会長がいることだった。
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