黄薔薇の蕾まっしぐら
黄薔薇の蕾まっしぐらはこれで終わりです。落ちとしては少し卑怯な気もしますが、そこらへんには目を瞑ってもらうということで。
拍手&コメントありがとうございます。おかげさまで魔法の手第一話の拍手が50を越えたみたいで諸手を挙げて喜んでいます。というか江×祐がこんなにたくさんの人に読んでもらえるとは思ってませんでした。
拍手&コメントありがとうございます。おかげさまで魔法の手第一話の拍手が50を越えたみたいで諸手を挙げて喜んでいます。というか江×祐がこんなにたくさんの人に読んでもらえるとは思ってませんでした。
お姉さまと生徒指導室へやって来た。
原因は新聞部が出したリリアン瓦版にお姉さまが夜な夜な男を換えては遊びまわっているという記事が書かれたから……というわけではなかった。
生徒指導室に着くとすでにお姉さまの御兄弟が集まっていた。
「何やってるの?」
お姉さまは隠す様子もなく不快そうに眉をひそめた。
「江利ちゃんが心配で飛んできたんだよ」
「江利ちゃん?」
私はお姉さまにあまりに似合わないその呼び名に思わずオウム返ししてしまった。
「しょうがないでしょ」
お姉さまは恥ずかしそうに顔を背けた。
私はその時、もしかしたらお姉さまはご兄弟を私に合わせるのが嫌で嘘をついていたのかもしれないとなんとなく思った。
私も祐麒を他人に合わせるときなんとなく恥ずかしい気持ちになるから。それが重度のシスコンとなれば、さらにその気持ちは増すだろう。
学園長がお兄様たちが新聞の記事を真に受けて職員室で暴れたらしいということをお姉さまに伝えた。
お姉さまは溜め息をつくと、小さくなっているお兄様たちを睨んだ。
丁度その時、コンコンとノックがなって山百合会のメンバーが男の人を連れてやってきた。
写真の最後の人物だった。
風貌からすこし年の取っている年齢に見える。だけど、お姉さまはこの人のことが好きなんだ。
そう思うと胸が苦しくなった。
さっきはどうにか笑うことができたけど、本人を前にすると心のうちに秘めた想いが溢れてきて私は押さえることができなかった。
私はその人の前まで歩いていく。
「お姉さまとはどういう関係なんですか?」
「どういうとは?」
私の質問の意図が分からないのか首をかしげて聞き返した。だけど、私にはちゃんとした解答ができるほど冷静でいられなかった。
「あなたはお姉さまのことちゃんと好きなんですか?」
「え」
驚きの声をあげたのは横にいた聖さまだった。
少し黙っておいて貰いたかったが私には今、ちゃんと周りをみれるほどの余裕はなかった。
もしちゃんと周りを見れていたならばそこにいるほとんどの人が呆然としていて、お姉さま一人だけ笑いを堪えているのに気づけたはずなのに。
「お姉さまを幸せにできますか?」
なんか涙が流れてきた。
お姉さまはお姉さまでお姉さま以上でもお姉さま以下でもなくて、だからお姉さまの恋愛もちゃんと応援してあげなきゃいけないのに、お姉さまが盗られてしまうのが悔しくて、もちろんお姉さまが誰かと付き合うからって私が捨てられるわけではないんだけど、流れ出た涙はどう頑張っても押さえることができなかった。
「お姉さまのこと守れるって約束できますか?」
そういえばお姉さまがこの人にちゃんと想いを伝えたかどうかも知らないのに勝手なことをして出しゃばってるんじゃないかと思ったけど、吐き出してしまった想いはもうとめることはできなかった。
「お姉さまを、お姉さまを……」
涙で声が枯れて最早何を言ってるのかも分からなくなって、悔しい想いをぶつけるかのように何度もつぶやいた。
「もういいから」
そんな私を止めてくれたのはやっぱりお姉さまだった。
後ろから私のことを優しく抱きしめてくれた。
そして、私をからかうことを生き甲斐にしているお姉さまはちゃんと最後にオチをつけてくれるのだった。
「ねえ、お父さん」
私の前で呆然と立っている男の人に向けて平然と言ってのけた。
あまりに自然に言うものだから、初め何を言ってるのか分からなかったくらいだ。
「あ、ああ」
男の人もお姉さまにそう言われてようやく動き出した。
それにしてもお父さんだなんて。
お父さん。
お父さん?
「お父さん? ……お父さん!」
「ええ、あれさっきも言わなかったかしら、私の愛しのお父さんよ」
そんなこと一言たりとも口にしなかった。
「おねえさまぁ」
もう叫ぶしかなかった。
なんだそれは私はお姉さまのお父さまに向かって今まであんなことを言っていたというのか。
あれじゃあまるで……。
思い出して顔が赤くなる。
一体何をしていたんだ私は。
「ふふ、それにしても祐巳はそんなに私のことが好きなのかしら?」
恨みがましくお姉さまを睨みつける。
お姉さまの策略の結果、私は自分の気持ちをお姉さまに吐露したといってもいい。だってお父さまに詰め寄った私はまるで好きな人の気持ちを奪われて八つ当たりをしているみたいに見えたのだから。
いや、実際私はお姉さまが好きなのだろう。
「好きですよ」
少なくとも誰にも盗られたくないと思うくらいは。
自分から認めるのも癪だったけど、結局お姉さまには何をしても敵わないだろうと思って私は自分の想いを伝えた。
そこは生徒指導室で山百合会のみんなもお姉さまのご家族もいたのだけど、そんなのは気にならなかった。
ただお姉さまの反応だけが私には気がかりだった。
断られたらどうしようとか、
突き放されたらどうしようとか、
だけど、私の最悪の予想に反して、お姉さまは私に向かって微笑んでくれた。
「あ」
それだけで十分だった。
「祐巳は馬鹿ね」
「何でですか?」
「言ったでしょ? こんなにも私が思ってるのにって」
「でもお姉さまにとってキスなんて挨拶みたいなものなんでしょ?」
お姉さまは呆れていた。
そりゃそうだ。だって私はいま物凄くわがままなことを言っているんだから。
「祐巳、おいで」
私はお姉さまの腕の中に納まる。
くい、っと顎を持ち上げられて私は上を向かされた。
「そんなに信じられないなら、信じさせてあげる」
そういうとお姉さまの顔が近づいてきて、
これは一体何の冗談なんだろうとか思って、
そういえばここは生徒指導室だなと思い出して、
周りを見れば全員が私たちの動向を見守っていて、
お姉さまの顔がもう目の前だった。
「カーット」
私はなんとかぎりぎりで踏みとどまってお姉さまから離れた。お姉さまは本気じゃなかったのか、簡単に離してくれた。
それが少し寂しかった。
本当に自分勝手なことだけど。
「一体何するおつもりですか?」
「何って想いを伝えるのに一番分かりやすい形はキスでしょう?」
それは目玉焼きにかけるなら醤油くらい軽いのりだった。私はソース派ですよ、なんて恐ろしくていえない。
話がそれた。
要は想いを伝える方法なら他にももっと色々方法があるだろうってことだ。
「祐巳」
「何ですか?」
最早やけだった。
大勢の人の前でキスされそうになるわ、お姉さまのご家族の前で恥はかくわ、もう何を言われても動揺なんてするもんかと意気込んで聞いたのだったが。
「愛してるわよ、祐巳」
そんなことをいわれた日にはもう自分でも分かるほど顔が熱くなっていくのが分かって、祐巳ちゃん真っ赤だよ、なんて聖様が茶化しているのも気にならないほど嬉しかった。だけど、それをお姉さまに知られるのは恥ずかしくて。
「知ってますよ」
なんて一人強がって見せた。
そんな様子をお姉さまは相変わらず笑ってみていて、その笑顔に呆れながらも心の中は幸せな気持ちに包まれていくのを感じるのだった。
私も大好きですよ、お姉さま。
お姉さまがいてくれたおかげでこの半年間がずっと楽しくなりました。
だから、
本当は嫌だけど、
卒業しちゃってもいいですよ。
もっとも私は絶対にこんなことを本人に言ってあげたりはしないのだ。絶対にからかわれる材料にされるだけだから。
お姉さまの笑顔を見ながら私の顔も自然と緩んでいった。
「そういえば恋煩いというのは一体なんだったんですか?」
「ああ、そのこと?」
「はい」
「それは多分、せっかく受験が終わったのに祐巳に全然会えなかったからよ。妹煩いってところかしら?」
そう言うとお姉さまはさっさと歩いていってしまう。
意図せずかしてか分からないが、私はお姉さまに振り回されてばかりだった。だけどそんな時のお姉さまが何より輝いて見えるのだから悲しいことでもある。
「おねえさまぁ」
私は自分でも分かるくらいの情けない声をあげてお姉さまの後を追うのだった。
原因は新聞部が出したリリアン瓦版にお姉さまが夜な夜な男を換えては遊びまわっているという記事が書かれたから……というわけではなかった。
生徒指導室に着くとすでにお姉さまの御兄弟が集まっていた。
「何やってるの?」
お姉さまは隠す様子もなく不快そうに眉をひそめた。
「江利ちゃんが心配で飛んできたんだよ」
「江利ちゃん?」
私はお姉さまにあまりに似合わないその呼び名に思わずオウム返ししてしまった。
「しょうがないでしょ」
お姉さまは恥ずかしそうに顔を背けた。
私はその時、もしかしたらお姉さまはご兄弟を私に合わせるのが嫌で嘘をついていたのかもしれないとなんとなく思った。
私も祐麒を他人に合わせるときなんとなく恥ずかしい気持ちになるから。それが重度のシスコンとなれば、さらにその気持ちは増すだろう。
学園長がお兄様たちが新聞の記事を真に受けて職員室で暴れたらしいということをお姉さまに伝えた。
お姉さまは溜め息をつくと、小さくなっているお兄様たちを睨んだ。
丁度その時、コンコンとノックがなって山百合会のメンバーが男の人を連れてやってきた。
写真の最後の人物だった。
風貌からすこし年の取っている年齢に見える。だけど、お姉さまはこの人のことが好きなんだ。
そう思うと胸が苦しくなった。
さっきはどうにか笑うことができたけど、本人を前にすると心のうちに秘めた想いが溢れてきて私は押さえることができなかった。
私はその人の前まで歩いていく。
「お姉さまとはどういう関係なんですか?」
「どういうとは?」
私の質問の意図が分からないのか首をかしげて聞き返した。だけど、私にはちゃんとした解答ができるほど冷静でいられなかった。
「あなたはお姉さまのことちゃんと好きなんですか?」
「え」
驚きの声をあげたのは横にいた聖さまだった。
少し黙っておいて貰いたかったが私には今、ちゃんと周りをみれるほどの余裕はなかった。
もしちゃんと周りを見れていたならばそこにいるほとんどの人が呆然としていて、お姉さま一人だけ笑いを堪えているのに気づけたはずなのに。
「お姉さまを幸せにできますか?」
なんか涙が流れてきた。
お姉さまはお姉さまでお姉さま以上でもお姉さま以下でもなくて、だからお姉さまの恋愛もちゃんと応援してあげなきゃいけないのに、お姉さまが盗られてしまうのが悔しくて、もちろんお姉さまが誰かと付き合うからって私が捨てられるわけではないんだけど、流れ出た涙はどう頑張っても押さえることができなかった。
「お姉さまのこと守れるって約束できますか?」
そういえばお姉さまがこの人にちゃんと想いを伝えたかどうかも知らないのに勝手なことをして出しゃばってるんじゃないかと思ったけど、吐き出してしまった想いはもうとめることはできなかった。
「お姉さまを、お姉さまを……」
涙で声が枯れて最早何を言ってるのかも分からなくなって、悔しい想いをぶつけるかのように何度もつぶやいた。
「もういいから」
そんな私を止めてくれたのはやっぱりお姉さまだった。
後ろから私のことを優しく抱きしめてくれた。
そして、私をからかうことを生き甲斐にしているお姉さまはちゃんと最後にオチをつけてくれるのだった。
「ねえ、お父さん」
私の前で呆然と立っている男の人に向けて平然と言ってのけた。
あまりに自然に言うものだから、初め何を言ってるのか分からなかったくらいだ。
「あ、ああ」
男の人もお姉さまにそう言われてようやく動き出した。
それにしてもお父さんだなんて。
お父さん。
お父さん?
「お父さん? ……お父さん!」
「ええ、あれさっきも言わなかったかしら、私の愛しのお父さんよ」
そんなこと一言たりとも口にしなかった。
「おねえさまぁ」
もう叫ぶしかなかった。
なんだそれは私はお姉さまのお父さまに向かって今まであんなことを言っていたというのか。
あれじゃあまるで……。
思い出して顔が赤くなる。
一体何をしていたんだ私は。
「ふふ、それにしても祐巳はそんなに私のことが好きなのかしら?」
恨みがましくお姉さまを睨みつける。
お姉さまの策略の結果、私は自分の気持ちをお姉さまに吐露したといってもいい。だってお父さまに詰め寄った私はまるで好きな人の気持ちを奪われて八つ当たりをしているみたいに見えたのだから。
いや、実際私はお姉さまが好きなのだろう。
「好きですよ」
少なくとも誰にも盗られたくないと思うくらいは。
自分から認めるのも癪だったけど、結局お姉さまには何をしても敵わないだろうと思って私は自分の想いを伝えた。
そこは生徒指導室で山百合会のみんなもお姉さまのご家族もいたのだけど、そんなのは気にならなかった。
ただお姉さまの反応だけが私には気がかりだった。
断られたらどうしようとか、
突き放されたらどうしようとか、
だけど、私の最悪の予想に反して、お姉さまは私に向かって微笑んでくれた。
「あ」
それだけで十分だった。
「祐巳は馬鹿ね」
「何でですか?」
「言ったでしょ? こんなにも私が思ってるのにって」
「でもお姉さまにとってキスなんて挨拶みたいなものなんでしょ?」
お姉さまは呆れていた。
そりゃそうだ。だって私はいま物凄くわがままなことを言っているんだから。
「祐巳、おいで」
私はお姉さまの腕の中に納まる。
くい、っと顎を持ち上げられて私は上を向かされた。
「そんなに信じられないなら、信じさせてあげる」
そういうとお姉さまの顔が近づいてきて、
これは一体何の冗談なんだろうとか思って、
そういえばここは生徒指導室だなと思い出して、
周りを見れば全員が私たちの動向を見守っていて、
お姉さまの顔がもう目の前だった。
「カーット」
私はなんとかぎりぎりで踏みとどまってお姉さまから離れた。お姉さまは本気じゃなかったのか、簡単に離してくれた。
それが少し寂しかった。
本当に自分勝手なことだけど。
「一体何するおつもりですか?」
「何って想いを伝えるのに一番分かりやすい形はキスでしょう?」
それは目玉焼きにかけるなら醤油くらい軽いのりだった。私はソース派ですよ、なんて恐ろしくていえない。
話がそれた。
要は想いを伝える方法なら他にももっと色々方法があるだろうってことだ。
「祐巳」
「何ですか?」
最早やけだった。
大勢の人の前でキスされそうになるわ、お姉さまのご家族の前で恥はかくわ、もう何を言われても動揺なんてするもんかと意気込んで聞いたのだったが。
「愛してるわよ、祐巳」
そんなことをいわれた日にはもう自分でも分かるほど顔が熱くなっていくのが分かって、祐巳ちゃん真っ赤だよ、なんて聖様が茶化しているのも気にならないほど嬉しかった。だけど、それをお姉さまに知られるのは恥ずかしくて。
「知ってますよ」
なんて一人強がって見せた。
そんな様子をお姉さまは相変わらず笑ってみていて、その笑顔に呆れながらも心の中は幸せな気持ちに包まれていくのを感じるのだった。
私も大好きですよ、お姉さま。
お姉さまがいてくれたおかげでこの半年間がずっと楽しくなりました。
だから、
本当は嫌だけど、
卒業しちゃってもいいですよ。
もっとも私は絶対にこんなことを本人に言ってあげたりはしないのだ。絶対にからかわれる材料にされるだけだから。
お姉さまの笑顔を見ながら私の顔も自然と緩んでいった。
「そういえば恋煩いというのは一体なんだったんですか?」
「ああ、そのこと?」
「はい」
「それは多分、せっかく受験が終わったのに祐巳に全然会えなかったからよ。妹煩いってところかしら?」
そう言うとお姉さまはさっさと歩いていってしまう。
意図せずかしてか分からないが、私はお姉さまに振り回されてばかりだった。だけどそんな時のお姉さまが何より輝いて見えるのだから悲しいことでもある。
「おねえさまぁ」
私は自分でも分かるくらいの情けない声をあげてお姉さまの後を追うのだった。
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コメント
No title
No title
ありがとうございます。
山辺先生出したかったんですけど、出してしまうと江利子様は確実に落とされるなーと思い出せませんでした。そうなったら祐巳ちゃんがあまりにも悲惨な状況になってしまうので。まあ、江利子様に捨てられて打ちひしがれている祐巳ちゃんも可愛い気が(ry
次回作もまた楽しんでもらえるよう頑張りたいと思います。
山辺先生出したかったんですけど、出してしまうと江利子様は確実に落とされるなーと思い出せませんでした。そうなったら祐巳ちゃんがあまりにも悲惨な状況になってしまうので。まあ、江利子様に捨てられて打ちひしがれている祐巳ちゃんも可愛い気が(ry
次回作もまた楽しんでもらえるよう頑張りたいと思います。
コメントの投稿
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山辺先生は最後まで出ませんでしたね。
でも出てこなかったおかげで二人のラヴラヴっぷりが見れたので出てこなくて良かったです。
次回作も楽しみにしています