魔法の手
拍手&コメントありがとうございます。
今回も「魔法の手」の続きになります。今更ながらアカイイトをアマゾンで買ってやっています。そんなんで更新遅くなりました。アカイイトは葛×桂が一番好きかも。キャラ的には烏月さん。と言ってもまだ葛エンド見ただけなんだけなんですけどね。魔法の手はそろそろ佳境を迎えて、本当はもうちょい江利子様と祐巳の心の動きを書きたかったが、力不足です。
例えば江利子が令に出会っていなかったら、
例えば祥子が祐巳のタイを直していなかったら、
そして、江利子と祐巳が出会ってしまったら、
そんな話。
今回も「魔法の手」の続きになります。今更ながらアカイイトをアマゾンで買ってやっています。そんなんで更新遅くなりました。アカイイトは葛×桂が一番好きかも。キャラ的には烏月さん。と言ってもまだ葛エンド見ただけなんだけなんですけどね。魔法の手はそろそろ佳境を迎えて、本当はもうちょい江利子様と祐巳の心の動きを書きたかったが、力不足です。
例えば江利子が令に出会っていなかったら、
例えば祥子が祐巳のタイを直していなかったら、
そして、江利子と祐巳が出会ってしまったら、
そんな話。
準備の時間なんて早いもので気づけば文化祭前日をむかえていた。
シンデレラの通し稽古をして、それが終わると祥子と柏木さんがいないことに気づいた。もしかしたらという不安が広がって、みんなが足踏みをしている所へ祐巳が「探しに行きましょう」と声をかける。
「祥子様は具合が悪くなって倒れているかもしれないし、柏木さんだって道に迷ってるだけかもしれない」
その一言に押されるように私達は立ち上がって祥子達を探しに行くのだった。
見つけたときはすでに柏木さんに祥子が手を掴まれて必死に逃れようとしているところだった。
その後、祥子が柏木さんが自分の従兄弟で婚約者であることを告げた。そのことに全員声も出ず驚いていると柏木さんが祥子の手を取る。
「だから肩だって抱くし、キスだって」
そう言ってキスしようとする柏木に祥子は平手を打ちをして逃げるように走っていった。そして、その後を追いかけるように祐巳が飛び出していく。
行かないでほしかった。
だけど、今の祥子のそばにいてあげられるのは多分祐巳だけだった。婚約者の柏木でも友達の栞でも姉の蓉子でもなく。
「行きましょうか?」
私達は薔薇の館で祥子と祐巳を待つことになった。
全てが終わって帰ってきたときの祥子はとてもさっき泣き出しそうに逃げていった子とは思えないほどしっかりとしていた。
「黄薔薇様、少しお話がありますので残ってもらっても」
「分かった」
私はみんなを帰すと祥子に向き直った。
「それで?」
「はい、賭けのことですけど」
「うん」
「私はシンデレラをやることにしました。逃げるのはもうやめることにしたんです。それを教えてくれたのは祐巳でした」
「そう」
「それだけを言いたかっただけです」
それだけを言うと祥子は鞄を持って行ってしまった。
明けて日曜日。
「この後用事ある?」
私は一年桃組の教室を訪ねた。
「交代の人がきたら、その後はありません」
もしかしたら祥子と周る約束をしているかもしれないと思っていた私は内心ほっとしていた。
「そう? なら待ってる間に展示を見せてもらうね」
そう言って十字架の道行の十四枚の絵を眺めていく。
その何枚目からを見終えたときに交代の人が来たのか祐巳がこちらに駆け寄ってきた。
「終わりました」
私は祐巳の手を引いて校舎の人ごみの中に飛び込むと振り返って聞く。
「どこに行きたい?」
「そうですね、せっかくですし写真部行ってみませんか?」
祐巳は迷った顔をして少し考えた後、そう提案した。
そういえば前に写真をパネルで載せたいと言われて許可していたことを思い出した。初めて祐巳と会って手を無理やり引っ張った瞬間が収められていた写真だった。
写真は一度見せてもらったけどパネルで飾られるということで私も興味があったので私は頷いた。
「人多いですね」
「そうね。こんなに多いと歩くのも大変ね」
写真部の展示場所では蔦子さんが案内をしていた。部活動に精を出している子の写真、体育祭でクラスが団結している写真、ほんとに色々な写真が飾られていた。そのどれもが一生懸命に生きている顔をしていた。
私とはまるで違う。
「これね」
「うわー、なんか恥ずかしいですね」
祐巳はそのパネル写真を見てそんな感想を漏らしていたが、私は写真の出来にもそうだが、何よりその写真につけられた題名に驚いていた。
『魔法の手』
確かに私と祐巳が手を繋いで走っている写真の下にそう書かれていた。
「蔦子さん、題名変えたんだ」
「あれは冗談って言ったでしょうが」
蔦子さんは笑って答えていた。
どんな題名だったのか興味はあったけど、むしろ今はなぜこの題名にしたのか私は知りたかった。
「何で魔法の手って題名にしたのか教えてくれる?」
魔法の手なんて、そう思いつくものじゃない。
「この題名は山百合会のシンデレラを見ていて思いついたんです。祐巳さんは誰にも負けないくらいな平凡な生徒でした。だけど、江利子様の魔法にかけられて山百合会というお城に行ってシンデレラになったんです。今のところ祐巳さんの王子様が誰かは分かりませんが」
蔦子さんはそれだけ言うと他のお客さんに呼ばれて行ってしまった。
私はもう一度その写真を眺める。
魔法の手、それは私にかけられた魔法のはずだった。だけど、本当は祐巳にも私と同じように魔法がかけられていたというわけだ。
そして、その魔法をかけたのは私。
「どうなさったんですか?」
「つまり私は魔法使いってわけか」
祐巳は不思議な顔を浮かべていた。
だけど、それ以上は何も言えなかった。
魔法使いはシンデレラに魔法をかけてお城に連れて行くだけのただの脇役にすぎないなんて思っていたことは。
舞台は午後の二時からだったが楽屋の更衣室に着いたのは一時をすでに回っていた。
「どこに行ってたの?」
着くなり蓉子に凄い形相で怒鳴られた。
「ごめんってば」
だけど、少しでも長く祐巳と一緒にいたかった。劇が終わればおそらく私は祐巳の隣にいられなくなるのだから。
絶対に離さないと心に誓ったはずだったのに、たとえそれが祐巳の望まない形であろうと、絶対に落としてみせる自信はあった。
だけど、今は祐巳が自分で決めた道を行ってほしかった。祐巳が望まないまま私の妹になったんじゃ意味がないと思っていた。
私は祐巳の肩に手を置くと、祐巳にだけ聞こえる声で呟く。
「魔法をかけてあげる」
えっ、と祐巳は驚いた声を上げていたが、トンと転ばないように、だけどこちらにも戻って来れないくらいに肩を強く押した。
「蓉子、祐巳の衣装お願い」
これでいいんだと自分の中で納得させた。
もう自分がどんなに足掻いたところでどうしようもないことが分かっているんだから。
変化を求めても結局私はそこで私が出来ることをこなしていくだけだった。自分にできないことを望んでもどうしようもないのだから。
そう割り切って今までやって来たつもりなのに、なぜか心のもやが取れなかった。
シンデレラの通し稽古をして、それが終わると祥子と柏木さんがいないことに気づいた。もしかしたらという不安が広がって、みんなが足踏みをしている所へ祐巳が「探しに行きましょう」と声をかける。
「祥子様は具合が悪くなって倒れているかもしれないし、柏木さんだって道に迷ってるだけかもしれない」
その一言に押されるように私達は立ち上がって祥子達を探しに行くのだった。
見つけたときはすでに柏木さんに祥子が手を掴まれて必死に逃れようとしているところだった。
その後、祥子が柏木さんが自分の従兄弟で婚約者であることを告げた。そのことに全員声も出ず驚いていると柏木さんが祥子の手を取る。
「だから肩だって抱くし、キスだって」
そう言ってキスしようとする柏木に祥子は平手を打ちをして逃げるように走っていった。そして、その後を追いかけるように祐巳が飛び出していく。
行かないでほしかった。
だけど、今の祥子のそばにいてあげられるのは多分祐巳だけだった。婚約者の柏木でも友達の栞でも姉の蓉子でもなく。
「行きましょうか?」
私達は薔薇の館で祥子と祐巳を待つことになった。
全てが終わって帰ってきたときの祥子はとてもさっき泣き出しそうに逃げていった子とは思えないほどしっかりとしていた。
「黄薔薇様、少しお話がありますので残ってもらっても」
「分かった」
私はみんなを帰すと祥子に向き直った。
「それで?」
「はい、賭けのことですけど」
「うん」
「私はシンデレラをやることにしました。逃げるのはもうやめることにしたんです。それを教えてくれたのは祐巳でした」
「そう」
「それだけを言いたかっただけです」
それだけを言うと祥子は鞄を持って行ってしまった。
明けて日曜日。
「この後用事ある?」
私は一年桃組の教室を訪ねた。
「交代の人がきたら、その後はありません」
もしかしたら祥子と周る約束をしているかもしれないと思っていた私は内心ほっとしていた。
「そう? なら待ってる間に展示を見せてもらうね」
そう言って十字架の道行の十四枚の絵を眺めていく。
その何枚目からを見終えたときに交代の人が来たのか祐巳がこちらに駆け寄ってきた。
「終わりました」
私は祐巳の手を引いて校舎の人ごみの中に飛び込むと振り返って聞く。
「どこに行きたい?」
「そうですね、せっかくですし写真部行ってみませんか?」
祐巳は迷った顔をして少し考えた後、そう提案した。
そういえば前に写真をパネルで載せたいと言われて許可していたことを思い出した。初めて祐巳と会って手を無理やり引っ張った瞬間が収められていた写真だった。
写真は一度見せてもらったけどパネルで飾られるということで私も興味があったので私は頷いた。
「人多いですね」
「そうね。こんなに多いと歩くのも大変ね」
写真部の展示場所では蔦子さんが案内をしていた。部活動に精を出している子の写真、体育祭でクラスが団結している写真、ほんとに色々な写真が飾られていた。そのどれもが一生懸命に生きている顔をしていた。
私とはまるで違う。
「これね」
「うわー、なんか恥ずかしいですね」
祐巳はそのパネル写真を見てそんな感想を漏らしていたが、私は写真の出来にもそうだが、何よりその写真につけられた題名に驚いていた。
『魔法の手』
確かに私と祐巳が手を繋いで走っている写真の下にそう書かれていた。
「蔦子さん、題名変えたんだ」
「あれは冗談って言ったでしょうが」
蔦子さんは笑って答えていた。
どんな題名だったのか興味はあったけど、むしろ今はなぜこの題名にしたのか私は知りたかった。
「何で魔法の手って題名にしたのか教えてくれる?」
魔法の手なんて、そう思いつくものじゃない。
「この題名は山百合会のシンデレラを見ていて思いついたんです。祐巳さんは誰にも負けないくらいな平凡な生徒でした。だけど、江利子様の魔法にかけられて山百合会というお城に行ってシンデレラになったんです。今のところ祐巳さんの王子様が誰かは分かりませんが」
蔦子さんはそれだけ言うと他のお客さんに呼ばれて行ってしまった。
私はもう一度その写真を眺める。
魔法の手、それは私にかけられた魔法のはずだった。だけど、本当は祐巳にも私と同じように魔法がかけられていたというわけだ。
そして、その魔法をかけたのは私。
「どうなさったんですか?」
「つまり私は魔法使いってわけか」
祐巳は不思議な顔を浮かべていた。
だけど、それ以上は何も言えなかった。
魔法使いはシンデレラに魔法をかけてお城に連れて行くだけのただの脇役にすぎないなんて思っていたことは。
舞台は午後の二時からだったが楽屋の更衣室に着いたのは一時をすでに回っていた。
「どこに行ってたの?」
着くなり蓉子に凄い形相で怒鳴られた。
「ごめんってば」
だけど、少しでも長く祐巳と一緒にいたかった。劇が終わればおそらく私は祐巳の隣にいられなくなるのだから。
絶対に離さないと心に誓ったはずだったのに、たとえそれが祐巳の望まない形であろうと、絶対に落としてみせる自信はあった。
だけど、今は祐巳が自分で決めた道を行ってほしかった。祐巳が望まないまま私の妹になったんじゃ意味がないと思っていた。
私は祐巳の肩に手を置くと、祐巳にだけ聞こえる声で呟く。
「魔法をかけてあげる」
えっ、と祐巳は驚いた声を上げていたが、トンと転ばないように、だけどこちらにも戻って来れないくらいに肩を強く押した。
「蓉子、祐巳の衣装お願い」
これでいいんだと自分の中で納得させた。
もう自分がどんなに足掻いたところでどうしようもないことが分かっているんだから。
変化を求めても結局私はそこで私が出来ることをこなしていくだけだった。自分にできないことを望んでもどうしようもないのだから。
そう割り切って今までやって来たつもりなのに、なぜか心のもやが取れなかった。
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